長年勤めあげた人への慰労金としてのニュアンスの高い退職金。
しかし、不況のあおりと最近の転職事情などから退職金がでない会社も多々あります。
では、退職金が出ない会社はやばいのか?辞めたほうがいいのか?
結論から言うと、以下のいずれかに該当するのなら辞めたほうがいいでしょう。
- 退職金がないのに給料も低い会社
- 成果を出しても評価が上がる気配のない会社
- 市場価値が上がるスキルが身につかない
- 将来の自分の夢ややりたいことにつながらない仕事しかできない
実は、退職金は毎月の給料に換算すると大きな額ではないため、退職金がないからといって即座に辞めたほうがいいというものでもありません。
例えば、退職金の1,000万円は、月々に直すと2.7万円ぐらいです。
(計算方法は、月々の給料に換算すると大した額ではないを参照ください)
しかし、退職金をもらえないだけの価値を、毎月の給料やスキルアップといった形で受け取れないのなら、転職した方がおトクだといえます。
転職エージェントに相談するなどして、水面下で転職の準備を進めることをおすすめします。
退職金に関する5つの事実
昔は終身雇用が当たり前だったので、定年退職したときに退職金をもらい、そのお金で老後を悠々自適に過ごすというライフプランだったと思います。
しかし、今や終身雇用は崩壊しており、転職するのも普通になりました。
それに伴い、退職金周りの事情も変化しています。
そこで、まずは退職金に関する5つの事実を紹介します。
退職金を出さない企業は年々増えている
以下は中小企業のデータですが、2002年には退職金を出さない企業が10.3%だったのが、2020年には20.9%と、倍増しています。
今は変化が早く大企業でも倒産する時代なので、何十年も先に支払う退職金を保証してくれる会社はどんどん減ってくるでしょう。
退職金の額も減っている
支給される退職金の額も減ってきています。
1990年代後半~2000年代前半をピークに、今ではピーク時より約2~3割ほど減っています。
退職金の額も増えることは期待できないでしょう。
退職金の制度があってももらえるとは限らない
そもそも、会社に退職金の制度があっても、もらえるとは限りません。
退職金の支払いは法律で定められたものではなく、支払うかどうかは会社が決めることです。
ただし、退職金を支払う場合は、就業規則に以下のことを記載することが労働基準法によって定められています。
- 退職金が支給される労働者の範囲
- 退職金の決定・計算方法
- 退職金の支払いの方法と時期
なので、就業規則に退職金に関する記載がなければ、退職金がもらえない場合があります。
就業規則は変わることがあるので、今は記載があっても、将来的に削除される可能性もあります。
また、勤務期間が短い場合も支給されないことがあります。
厚生労働省の調査によると、退職金を出す企業の約半数が3年以上勤務している人にしか支給していません。
さらに、これは当然のことですが、会社が倒産すれば退職金ももらえません。
30年以上続いている会社は約半分しかないため、退職金に過度な期待をするのは危険なのです。
勤続年数が短いともらえる退職金は少ない
先ほど、勤続年数が3年以下の場合はもらえない企業が約半分と紹介しましたが、勤続年数が短いともらえる額もグッと減ります。
例えば、勤続年数20年の場合は970万円ほどもらえたとしても、勤続年数が10年の場合は約310万円と、勤続年数が半分なのにもらえる退職金は3分の1に減ります。
なお、上記グラフの「中央労働委」とは資本金が5億円以上、従業員数が1,000人以上の大企業を対象に集計されたデータ、「東京都」とは都内の従業員数が300人未満の中小企業を対象に集計されたデータです。
また、勤続年数が20年以下の場合は、退職金にかかってくる税金も増えます。
退職金の税金を計算するときには、退職金の一部を税額の計算対象から除外する「控除」が適応されます。
要は、
退職金の税額 =(退職金の額ー控除額)× 2分の1 × 税率
となり、控除額は以下のように計算されます。
- 勤続年数20年以下の控除額:40万円 × 勤続年数
- 勤続年数20年超える人の控除額:800万円+70万円 × 勤続年数
グラフにすると以下のようになります。
なので、勤続年数が20年以下の場合はもらえる退職金が大きく減ってしまうのです。
月々の給料に換算すると大きな額ではない
冒頭で紹介したとおり、退職金が1,000万円もらえる場合は、月々に換算すると2.7万円ぐらいです。
勤続年数が43年(22歳~65歳)だとすると、先ほどの控除額が1,000万円を超えるので、税金はかかりません。
なので、1,000万円 ÷ 43年 ÷ 12ヶ月=約1.94万円となります。
この額を手取りでもらおうとすると、ここに社会保険料や所得税、住民税などがかかってきます。
- 社会保険料:約28~30%(会社負担分を含む)
- 所得税と住民税:約10%(額面の年収が500万円ぐらいの場合の額面に対する割合)
- 雇用保険:約1.5%(会社負担分を含む)
- 労災保険:約0.2~9%(会社負担分、危険な業種は高い)
合計で、約40%ほどの税金や保険料が取られます。
なので、1.94万円 × 1.4=約2.7万円が、退職金1,000万円に相当する月々の給料になります。
厳密に計算すると計算方法は違いますが、ざっくり計算するとこんな感じです。
月に約3万円ほどならば転職で給料アップしたり、副業で稼いだりできるでしょう。
それに、そもそも一番お金が必要になるのは30~50代ぐらいでしょう。子育てや家のローン、親の介護などでお金がかかる時期にもらうのと、定年後にもらうのとでは価値が変わってきます。
退職金がないことにもメリットはある
退職金がないことは悪いことのように思えますが、退職金がない会社にはメリットもあります。
ここでは以下の3つを紹介します。
- 退職金がある会社と比べて給料が高い場合がある
- 会社に不満があるなら転職の踏ん切りをつけやすい
- 予期せぬ退職金カットに悩まされない
退職金がある会社と比べて給料が高い場合がある
中小企業には退職金制度がない会社も多くあります。
ただ、その分給料を高くしないと優秀な人材が集まらないため、退職金制度がある会社よりも給料が高いことがあります。
特に大型の資金調達をしているベンチャー企業などだと、専門的なスキルを持っている人は高給を払ってでも採用しようとしている会社はあります。
退職金は3年以上働いてないともらえないこともありますが、給料の場合は勤続年数の制限もないですし、退職金をもらうよりもおトクなことも少なくないでしょう。
会社に不満があるなら転職の踏ん切りをつけやすい
退職金がある会社で働いていると、長時間労働や上司のパワハラなどがあったとしても、退職金欲しさに転職を躊躇してしまうかもしれません。
健康だからこそ働けるのであり、身体や精神を壊してしまっては退職金をもらうよりも損になることもあります。
退職金がない会社だと、変に我慢せずに転職を決意しやすいです。
予期せぬ退職金カットに悩まされない
退職金の制度があってももらえるとは限らないで紹介したとおり、退職金はもらえない可能性があります。
なので、退職金がもらえることを前提に人生設計をしてしまうと、計画が狂ってしまう可能性があります。
退職金がなければ毎月の給料を貯金したり投資に回したりして、自分でコントロールできるため、計画が狂いにくいです。
退職金がなくて辞めたほうがいい会社の例
退職金がない会社にもメリットがあるとはいえ、退職金がないだけのメリットがなければ居続ける意味もありません。
冒頭で紹介したように、以下の4つのどれかに該当するなら、転職を考えるのもアリでしょう。
①退職金がないのに給料も低い会社
世の中には、労働者を安くこき使おうと考えるブラック企業も存在します。
そんな会社では、
なんで辞めていく人間にわざわざ金を渡す必要があるんだ!
と考え、退職金はおろか、ボーナスや月の給料さえも低く抑えられています。そんな会社からは一刻も早く脱出することが先決ですね。
②成果を出しても評価が上がる気配のない会社
業績を右肩上がりで伸ばしているにも関わらず、評価される気配が全くない会社もやばいです。評価が上がらないということは、給料も上がらないからです。
こういった会社の場合は内部で何が起こっているかというと、末端の社員に働かせるだけ働かせといて利益を上部の経営陣が独占しています。
現場で疲弊する社員への恩返しなどは微塵も考えている様子はなく、むしろ売上を立ててくれたことに、
ラッキー。あいつらのおかげで今月も俺たちは楽できるぞ!
こんな事を考えているぐらいです。
目標を達成したり、シビアなコストで予算を達成しているのに幹部の反応が単なる賞賛だけの場合は気をつける必要があります。
退職金が無いどころか、将来がありませんね。そんな会社は。
③市場価値が上がるスキルが身につかない
今の時代、いつ会社が倒産するかわからないので、いつでも転職できるように常に市場価値を意識してスキルアップしておくことは重要です。
にもかかわらず、単純作業などの市場価値が上がらない仕事しかできないのであれば、早めに転職しておいたほうが、長期的にはメリットがあるかもしれません。
④将来の自分の夢ややりたいことにつながらない仕事しかできない
市場価値が上がらなかったとしても、将来独立したい、起業したいために今の会社で働いているのなら問題ないでしょう。
将来の夢ややりたいことがあるのであれば、目先の給料や退職金など気にせずに働くべきです。
しかし、ただ漫然と今の会社で働いているだけなら転職したほうがいいかもしれません。
転職したほうがいいかな?と思ったら転職エージェントに相談しよう
ここまでの内容を読んで、少しでも転職を考えているなら、まずは転職エージェントに相談してみましょう。
転職エージェントを利用すれば自分で企業を探す手間を省けますし、選考対策もやってもらえます。
利用は無料ですし、転職するかどうか決めてなくも利用可能なので、とりあえず登録だけしておいて、紹介される求人の待遇の良さを見てみるという使い方もアリです。
ただし、転職エージェントの中には、ブラック企業でもいいからとにかく紹介数を伸ばして利益を伸ばそうとしている悪質なエージェント会社もあります。
それを避けるためにもおすすめの転職エージェントを選びましたので、紹介します。
リクルートエージェント
リクルートエージェントの特徴は、なんと言っても求人数の多さ。日本一の求人数を誇ります。一般の求人サイトには掲載していない非公開求人も10万件以上あり。
様々な職種、年齢、勤務地に対応しており、転職した者の2/3は一度は登録しています。
豊富な転職支援実績データに基づく選考サポートが手厚く、履歴書作成から面接準備まで転職のプロがサポートしてくれるので、登録しておいて損はありません。
カウンセラーの対応も迅速なので、働きながら転職活動をするのにうってつけのエージェントです。
LHH転職エージェント
LHH転職エージェントで年収アップしている人多数!キャリアアップを目指す人向けの転職エージェントで、外資系、法務・経理などの管理部門、第二新卒などの転職に特に強いのが特徴です。
世界でもTOP3位に入る人材会社のアデコグループが運営しており、細かなカウンセリングによる高いマッチング精度が売り。
普通のエージェントは転職者と企業側の担当が分かれているところ、LHH転職エージェントは1人で転職者と企業側を担当しています。そのため、企業カルチャーとの相性まで見極めることが可能です。
エージェントは各専門職種に精通しているため、他のエージェントにはできなかった専門的なことまで相談できます。
doda
dodaは、転職者満足度No.1、人材紹介会社に関するポジティブな口コミ数でNo.1を獲得しており、職種ごとの多種多様な求人を保有しています。
求人数もリクルートエージェントに次いで多く、非公開求人を含めて約10万件。大手企業から中小やベンチャー企業まで幅広い求人を持っています。
履歴書、職務経歴書だけでは伝わらない人柄や志向を企業に伝え、選考通過を後押ししてくれるなど、転職成功のサポートも万全です。
転職活動に失敗したくない人や、次こそは長く働ける職場を探したいと考えている人などにおすすめです。
アデコ転職エージェント
アデコ転職エージェントは、日本で37年以上の人材事業を運営している実績があります。
人気の事務職や営業の求人に特に強く、一般事務や経理事務、総務事務や英語を活かす事務系の求人が多めです。他にも、IT系や広報・マーケティングの求人などもあります。
他の大手の転職エージェントと比較すると求人数は少なめですが、やはり求人数が少ない事務職に強いのが魅力的です。事務未経験でもOKな求人もあります。
ただし、特に事務職は人気なので、20代~30代前半ぐらいまででないと求人が見つからない可能性もあります。
何はともあれ面談してみないと分からないので、まずは相談してみましょう。平日の遅めの時間帯も面談可能です。
マイナビAGENT
マイナビAGENTは、20代からの信頼がNo.1の転職エージェントです。
熱意のある担当者によるサポートも評価が高く、中小企業や第二新卒のための独占案件の多さに定評があります。
転職サポートについては、職務経歴書のブラッシュアップや模擬⾯接はもちろん、利⽤回数や期間に制限なく転職相談をすることが可能です。
また、関東圏・関西・東海地方の求人が豊富で、20~30代向けのベンチャーから大手まで優良企業の求人を保有しています。
退職金に代わるものを準備する方法
金融庁の試算では、「老後20〜30年間で約1,300万円〜2,000万円が不足する」とも言われており、退職金がもらえないことに不安を感じている人もいるでしょう。
そこで、退職金に代わるものを準備する方法を4つ紹介します。
確定拠出年金(iDeCo)を利用する
個人型の確定拠出年金(iDeCo)を聞いたことがある人も多いでしょう。iDeCoとは、公的年金にプラスして給付を受けられる年金制度です。
掛金を自分で設定でき、自分で運用方法を決め、原則60歳以降に受け取ることができます。
掛金の金額が課税所得から差し引かれるため、所得税と住民税が安くなるというメリットがあります。運用したときの利息や運用益にも税金がかからず、受け取るときにも税金面で優遇されます。
節税効果の目安は以下のとおりです。
ただし、会社員であれば、掛金の上限が月々23,000円までと多くなく、以下のようなリスクもあります。
- iDeCoの受け取りが終了するまで手数料がかかる
- 投資信託など、運用する商品によっては元本割れのリスクがある
- 原則60歳まで引き出せない(掛金の金額は変更可能)
個人的には60歳まで引き出せないのが一番のリスクだと思ってます。人生何があるかわからないですからね。必要なときにお金が引き出せないと意味がありません。
メリットとデメリット、両方を理解した上で利用するかを検討してみるといいでしょう。
利用したい場合は証券会社でiDeCo口座の開設が必要となります。iDeCoについての詳細は、以下の記事が参考になります。
» iDeCo(イデコ)のおすすめ商品・金融機関は?メリットや手数料も分かりやすく解説!|いろはに投資
会社に「中小企業退職金共済」の利用を提案する
今は会社に退職金の制度がなくても、退職金制度を作ることを提案するという方法もあります。
実は、「中小企業退職金共済」という制度を利用すれば、中小・ベンチャー問わずに簡単にその仕組を作る事ができます。
中小企業退職金共済とは、簡単に言えば「中小企業向けの厚生労働省が管理する退職金のシステム」です。国が管理しているので信頼できます。
なお、中小企業退職金共済には以下のようなメリットがあります。
- 掛金の負担軽減措置
新規加入時には従業員ごとに最高6万円を国が減額します。 - 掛金は損金または必要経費として全額非課税
掛金は損金または必要経費として全額非課税になります(要は、経費になる)。 - 手続きが簡単かつ、きめ細やかなサービス
掛金の管理・運用が安全で、掛金の納付は口座振替で手間がかかりません。
細かいルールはありますが、この制度の大きな特徴は掛金を全額会社が負担し、経費にできる点です。更には会社の資金的な余裕を考えて月5,000円~30,000円の間で掛金を選択できます。
ただし、ブラック企業の場合は受け入れてもらえない可能性が高いでしょう。
実は、私が以前ブラック企業に勤めていた時に、社長に直談判しましたがダメでした…。
上述したメリットを提案し、人材確保もできる事も考えて、こういった仕組みを自社に取り入れる事を進言しましたが、間髪をいれずに
NO!!
と言われました。
なぜ断られたのでしょうか?
実は、中小企業退職金共済は役員と事業主は加入できないのです。加入できるのは雇われている社員だけで、社長自身は入れません。
普通に考えれば税金対策にもなるし、社員の福利厚生も拡充するので何も損は無いように見えます。
ですが、ブラック企業の社長ともなると短絡的で社員の福利厚生など考えないんですよね。全く。
おまけに自分含む役員は加入できないともなると、そんな事に金をかけられるか!ってなってしまうようです。
投資や副業をする
投資や副業をして、別の収入源を確保するという方法もあります。
投資をするなら米国のインデックス投資など、確実性が高く預金よりも利率が高いものに投資するのがおすすめです。また、NISAという制度を利用すれば、運用益を一定期間、非課税にすることも可能です。
また、今ではネットで稼ぎやすい環境が整ってきているので、副業もおすすめです。
今の会社で培ったスキルを活かせる副業を見つけたほうが稼ぎやすいですが、クラウドワークスなどのサイトを使えばWebライティングなどの仕事は簡単に見つかります。
Webライティングは始めやすいですしおすすめですが、月に10万円以上稼ぎたいならプログラミングの方がおすすめです。
エンジニアの方がプログラミングの副業についてまとめているので、興味があれば読んでみて下さい。
高い給料やストックオプションのある会社に転職する
少しハードルは高いですが、今より給料が高い会社や、ストックオプションのある会社に転職し、収入を増やすという方法もあります。
なお、ストックオプションとは、上場前のベンチャー企業などの従業員が自社株を一定の価格で購入できる権利のことです。
もし会社が上場したり売却された際には株の値段が上がり、大きな収入を得ることも可能です。
ただ、ストックオプションを得るのはかなり難しいです。詳しくは以下の記事で紹介しています。