結論から言うと、試用期間が6ヶ月(半年)だとしても、それだけで危険な会社だとは言えません。
そもそも、法律上は試用期間の長さについて規定されていません。半年だろうと1年だろうと違法ではなく、それぞれの会社が自由に決めることができるのです。
とはいえ、6ヶ月を超えて試用期間を設定している会社は少し気をつけたほうがいいかもしれません。特に、試用期間だからという理由で給料を差っ引かれている場合は。
なぜなら、そういう会社の裏には、とにかく人を安く使おうという魂胆が隠れているからです。
もし今あなたが働いている会社や、これから働こうと思っている会社が該当するのなら、転職したほうがいいかもしれません。
まだ転職して間もない場合はまた転職活動するのが面倒かもしれませんが、転職エージェントに相談してみましょう。
試用期間は3ヶ月程度の会社が一番多い
少し古いデータですが、2014年に行われた調査によると、正社員における新卒・中途それぞれの試用期間の割合は以下のとおりです。
期間 | 新卒採用の場合 | 中途採用の場合 |
---|---|---|
2ヶ月程度 | 8.4% | 8.3% |
3ヶ月程度 | 66.1% | 65.7% |
6ヶ月程度 | 18.3% | 16.5% |
6ヶ月より長い | 7.2% | 9.5% |
データから分かるように、試用期間が6ヶ月以上の会社は全体の約25%です。意外に多いなという印象があります。
推測ではありますが、試用期間を6ヶ月としている会社は、有給休暇が付与される入社後6ヶ月というタイミングに合わせて設定しているのかもしれません。
重要なのは試用期間が長い理由
単純に試用期間の長さで判断するよりも、会社が長い試用期間を設定している理由の方が重要です。
よくあるのは、お互いの相性を見極めるために期間を長くしているというもの。
日本の法律では、正社員として採用すると基本的に解雇はできません。なので、試用期間を長くして、面接で話していたことが嘘じゃないかなども含めて確認したいということです。
試用期間だからといって簡単に解雇することはできませんがね…。
まあ、上記のような理由なら特に大きな問題はないでしょう。
問題なのは、以下のような理由で試用期間を長くしている企業です。
上記に当てはまる企業や繰り返し試用期間を延長している会社は、ダメなら人を使い捨てようと思っているブラック企業である可能性があります。そもそも、上記の理由の中には違法のものもあります。
不安ならば、総合労働相談コーナーや転職エージェントに相談してみましょう。
試用期間に関するよくある質問
試用期間に関するよくある質問をまとめてみました。
試用期間中や試用期間後に解雇されることはあるのか?
A. 試用期間中や試用期間後に解雇されることはありますが、正当な理由がない解雇は違法となります。労働契約法 第16条に違反することになるからです。
正当な理由に該当するのは、例えば
- 試用期間中に頻繁に遅刻や欠勤を何度も繰り返す
- 反抗的な態度をとったり、仕事に対して協調性が全くない
- 学歴、職歴、犯罪歴といった重要な経歴を偽っており、会社への大きなマイナスの影響がある
などの場合です。
よくありがちな能力不足による解雇は、そう簡単に認められるわけではありません。
企業が適切に指導や教育を行っていたかも重要なポイントで、その上で能力不足と判断したことの妥当性が問われます。
ただし、上級管理職や金融トレーダーなどの高度な専門知識や経験を期待して採用された場合は、試用期間の解雇に対する基準が緩やかになるので、注意が必要です。
正社員採用だけど試用期間中だけ契約社員というのは問題ない?
A. 労働契約書で「正社員採用」となっている場合は、契約社員として扱うことはできません。
なので、
あれ?正社員採用でしたよね?
いや、お前は使えないから契約社員としての契約に変更したから。
来月で契約終了な。
などというやり取りは許されません。
正社員採用なので、試用期間中や試用期間の終了後に簡単に解雇することもできません。
試用期間が延長されるのは問題ないのか?
A. 条件に合致していれば試用期間の延長が認められることがあります。ただし、繰り返し延長するのは違法となる可能性が高いです。
条件というのは、以下の3つのことです。
- 試用期間を延長するだけのやむを得ない理由がある
- 就業規則に試用期間の延長の可能性や期間などについて明記してある
- 試用期間が延長となる可能性があることを採用時に労働者が合意している
1. について少し補足しておくと、試用期間中の解雇に値する正当な理由に加え、病気や怪我による入院・通院で勤務日数が極めて少ない場合も該当します。
また、試用期間中に労働者が何かしら問題を起こしたときに、延長した試用期間で本当に反省しているか・過ちを繰り返さないかを判断するために、延長が認められることがあります。
ただし、延長できるのは必要最小限の期間だけなので、繰り返し試用期間が延長されるのは違法となる可能性が高いです。
(参考)判例紹介~試用期間の延長は認められる?~|弁護士法人天満法律事務所
試用期間中は給料が安いのは違法?
A. 労働契約書や就業規則などで規定されていれば問題ありません。とはいえ、減額していいのは最長6ヶ月までです。
2004年のデータでは約4割の会社が試用期間中は本採用後に比べると安い給料を設定していましたが、今では多くの会社で試用期間中も本採用後と変わらない会社が多いように感じます。
まともな会社はね。
また、試用期間中であれば最低賃金を下回る給料でもOKとされています (最低賃金の減額特例)。ただし、下げていい額は最低賃金の20%までです。
20%というのも大きな金額で、一番高い東京都の最低時給が1,072円(2022年12月6日時点)なので、その20%減となると約858円となり、全国の最低時給853円とほぼ同等です。
最低時給が853円の地域なら、20%減となると約682円です。
こんな時給なら普通は辞めたいと思うので、まともな会社はわざわざ試用期間中も減額しないでしょう。
そもそも、「最低賃金の減額特例」を受けるためには
- 都道府県の労働局長の許可
- 業種や職種の実情からみて最低賃金を減額する合理的な理由
が必要です。不当に給料を下げ、退職に追い込むなんてことは当然認められません。
試用期間中はボーナスを出さなくても問題ないのか?
A. 試験期間かどうかに関わらず、ボーナスを支給するかどうかは会社が決めることなので、出さなくても問題ありません。
とはいえ、社内規定や就業規則でボーナス関する取り決めがあるときには、そのルール通りにボーナスを支払う必要があります。
とはいえ、試用期間中のボーナスの額を減額するルールを取り決めている企業もありますし、満額はもらえないケースが多いです。
試用期間中だから残業代が出ないのは違法?
A. 試用期間中であろうと、残業代が出ないのは違法です。労働基準法 第37条で規定されている通りです。
残業代(時間外労働)と同様に、深夜労働や休日出勤の割増賃金ももらえます。
割増賃金についての補足も記載しておきます。
試用期間中は社会保険がないのは問題ない?
A. 試用期間中であっても、社会保険や雇用保険、労災保険には加入しなければいけません。
社会保険(健康保険・厚生年金)は、会社が法人の形態をとっているなら加入が必須です。個人事業であっても、従業員数が5人以上いるのであれば、基本的には加入が義務付けられています。
雇用保険は、「週20時間以上の労働」「31日以上の雇用予定」があれば加入が必須です。労災保険は、パート・アルバイト含め、全ての労働者が加入しなければなりません。
社会保険についての詳細は以下の記事をご覧ください。
試用期間で働いている会社を辞めたいときはどうすればいいのか?
ここまでの内容を読んで、
いま試用期間で働いている会社はヤバいかも…
と思った方もいるかもしれません。
中には、今の会社を辞めて転職したい人もいるでしょう。
そんな時に引っかかるのが短期での離職。職務経歴にキズがついてしまったり、次の転職の面接で突っ込まれないかが気になってしまうのです。
我慢できないならさっさと転職しよう
短期での離職はマイナス面も大きいですが、ずっと我慢して働いていける自信がないのであれば、早めに転職しておくことをおすすめします。
年を重ねるほど転職はやりづらくなりますし、万が一メンタルを病むなどの病気になったら、その方がダメージが大きいからです。
なお、短期で退職するときの理由の説明の仕方は、以下の記事で紹介しています。
試用期間で退職した経歴を書かない方法もあるが…
そもそも、試用期間で退職した経歴を書かないという選択肢もあります。言いたくない経歴を隠すこと自体は犯罪ではないからです。
ただ、経歴に何もしてない空白期間ができることになるので、そのときに何をしていたかは説明できる必要があります。
それに経歴を隠した場合は経歴詐称となり、選考の途中や入社前にバレた場合は採用取り消しとなるでしょうし、入社した後に発覚した場合は、さいあく懲戒解雇となる可能性もあります。
あまり推奨はできませんが、試用期間中の退職を隠す方法は以下の記事で紹介しています。
いずれにせよ、試用期間中の会社の振る舞いに疑問を感じているのなら、転職エージェントに相談してみましょう。1人で悩むよりも、誰かに相談したほうが解決しやすいからです。
おすすめの転職エージェントも選んでおいたので、最後に紹介します。
おすすめの転職エージェント
リクルートエージェント
リクルートエージェントの特徴は、なんと言っても求人数の多さ。日本一の求人数を誇ります。一般の求人サイトには掲載していない非公開求人も10万件以上あり。
様々な職種、年齢、勤務地に対応しており、転職した者の2/3は一度は登録しています。
豊富な転職支援実績データに基づく選考サポートが手厚く、履歴書作成から面接準備まで転職のプロがサポートしてくれるので、登録しておいて損はありません。
カウンセラーの対応も迅速なので、働きながら転職活動をするのにうってつけのエージェントです。
LHH転職エージェント
LHH転職エージェントで年収アップしている人多数!キャリアアップを目指す人向けの転職エージェントで、外資系、法務・経理などの管理部門、第二新卒などの転職に特に強いのが特徴です。
世界でもTOP3位に入る人材会社のアデコグループが運営しており、細かなカウンセリングによる高いマッチング精度が売り。
普通のエージェントは転職者と企業側の担当が分かれているところ、LHH転職エージェントは1人で転職者と企業側を担当しています。そのため、企業カルチャーとの相性まで見極めることが可能です。
エージェントは各専門職種に精通しているため、他のエージェントにはできなかった専門的なことまで相談できます。
doda
dodaは、転職者満足度No.1、人材紹介会社に関するポジティブな口コミ数でNo.1を獲得しており、職種ごとの多種多様な求人を保有しています。
求人数もリクルートエージェントに次いで多く、非公開求人を含めて約10万件。大手企業から中小やベンチャー企業まで幅広い求人を持っています。
履歴書、職務経歴書だけでは伝わらない人柄や志向を企業に伝え、選考通過を後押ししてくれるなど、転職成功のサポートも万全です。
転職活動に失敗したくない人や、次こそは長く働ける職場を探したいと考えている人などにおすすめです。
アデコ転職エージェント
アデコ転職エージェントは、日本で37年以上の人材事業を運営している実績があります。
人気の事務職や営業の求人に特に強く、一般事務や経理事務、総務事務や英語を活かす事務系の求人が多めです。他にも、IT系や広報・マーケティングの求人などもあります。
他の大手の転職エージェントと比較すると求人数は少なめですが、やはり求人数が少ない事務職に強いのが魅力的です。事務未経験でもOKな求人もあります。
ただし、特に事務職は人気なので、20代~30代前半ぐらいまででないと求人が見つからない可能性もあります。
何はともあれ面談してみないと分からないので、まずは相談してみましょう。平日の遅めの時間帯も面談可能です。
マイナビAGENT
マイナビAGENTは、20代からの信頼がNo.1の転職エージェントです。
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