多くの企業で取り入れられている「日給月給制」。正社員に対してもこの給与形態の会社は多いです。
結論から言うと、日給月給制を導入していること自体は違法ではありません。
民法第624条を根拠とした、「労務者が『労務』を提供していない場合、つまり働いていない場合、使用者はその部分についての賃金を支払う義務はない」という原則(ノーワーク・ノーペイの原則)が適応されるためです。
ただし、運用方法によっては違法になり得ます。
そこでこの記事では、日給月給制や他の給与形態との違い、日給月給制が違法になるケースなどを紹介します。
そもそも日給月給制ってなに?
日給月給制とは、「日給をベースにして月額の給料があらかじめ決まっているが、欠勤や遅刻・早退をした場合、その分を給料から差し引く」給与形態です。
日給月給制の場合は、月単位で支給される職務手当、役職手当などの手当も減額されます。ただ、ゴールデンウィークやお盆、年末年始や日曜日などの、会社が休みのときに休んでも減給はされません。
他の給与形態との違いが分かりやすいように、ザックリとそれぞれの給与体系についてまとめてみました。
欠勤や遅刻・早退の扱いやどれだけ減給されるかは就業規則に記載されるべきもので、従業員数が10人以上なのに就業規則に記載がなければ違法です(労働基準法 第89条)。
完全月給制と比較した時の日給月給制の大きなメリットはない
日給月給制は、欠勤や遅刻があった場合に、その分を月額の給料から差し引けるという企業側のメリットが大きいように感じます。
確かに、残業代や休日出勤の手当などが別でもらえるというのは完全月給制と同じです。
以前は日給月給制にもメリットがありましたが、法律の改正によって完全月給制と比較すると大きなメリットはなくなりました。唯一あるとすれば、会社を休んだとしても給料は減額されるため、罪悪感を感じなくていいことぐらいでしょうか。
なお、以前あった日給月給制のメリットには「退職の申し出は2週間前でいい」というものです。2017年に民法第627条 第2項が改正されてからは、完全月給制であっても退職は2週間前に通知すればOKとなりました。
完全月給制を導入している企業は少なめではあるものの、どうしても完全月給制のほうがいいのであれば転職を検討したほうがいいでしょう。
少し古いですが、平成22年のデータでは完全月給制の企業は約4割ほどあります。
なお、転職するなら転職エージェントの利用がおすすめです。転職エージェントは企業の内情を把握していることがあるので、企業の賃金形態まで知っていることがあります。
転職サイトで検索しても、会社によっては「月給日給制」を「月給制」と言っていたりするので、いざ面接のときに聞いてみたら思ってたのと違った、ということもありえます。
利用は無料ですし、転職するかどうか決めてなくも利用可能なので、気軽に利用してみましょう。
日給月給制が違法となるケース・ならないケース
まともな企業では、日給月給制であっても違法ではありませんが、日給月給制以前の問題で違法となる場合があります。
例えば、以下の2つのようなケースです。
日給月給制だからといって、これらのことが許されるわけではありません。
ただ、以下の2つのようなケースでは、すぐには違法とは言えません(違法となる条件もあります)。
詳しく説明します。
社会保険がない場合は違法
社会保険に加入すると、おまえの手取りも減っちゃうから
という理由で、社会保険を完備していない事を平然と言ってくる会社があります。
しかし、社会保険の適用に給与形態は関係ありません。当然、日給月給制でも適用事業所に当てはまっていれば、適用させなければ違法です。
残業代や休日出勤の手当が出ない場合は違法
経営者の中には、
日給月給制だから残業代は出さなくていい
と考えている人もいます。中には、
- 残業代込みの日給額
- 割増賃金込みでの支給
といった形で、残業代を支給することをカモフラージュしている場合もあります。特に、飲食やトラックドライバーなどの長時間拘束される職種でよく見られます。
しかし、残業代や休日出勤の手当も給与形態とは関係ありません。支払われなければ違法です。
聞いていた給与形態と実態が違う場合は違法とは限らない
転職サイトに書いてあったことや、面接のときに聞いたことと違っていた場合は、すぐには違法とは言えません。
ただし、雇用契約書に記載された条件と実態の給与形態が異なる場合は、労働基準法 第15条に違反しており、ただちに労働契約を解除できます。
第15条
1. 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
2. 前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
引用元:労働基準法第15条|Wikibooks
また、実際の労働条件よりもいいものだと嘘をついて募集していた場合も違法です。
例えば、完全月給制であるかのように謳い、実態は日給月給制で、休んだ分が給料から引かれた。こんな場合です。
職業安定法 第65条8号に以下のような記載があり、これに違反しています。
第65条
次の各号のいずれかに該当する者は、これを6ヶ月以下の懲役又は30円以下の罰金に処する。(中略)
八 虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を提示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行った者又はこれらに従事した者
引用元:職業安定法|e-Gov法令検索
そもそも、労働契約の段階でどういった形で給料を支払うのかを書面で明示することが、労働基準法 第15条で定められています。
賃金の支払いはトラブルになりやすい問題でもあるので、しっかり確認する必要があるのですが、ブラック企業ほどあやふやに済ませるので注意しましょう。
欠勤や遅刻・早退した分を超えて減給された場合は違法とは限らない
実は、欠勤や遅刻・早退した分を超えて減給されたからといって、ただちに違法となるわけではありません。例えば、1時間遅刻したから3時間分減給する、といった具合です。
しかし、労働基準法には以下のような記載があり、この基準を超えて減給すると違法です。
第91条
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。
引用元:労働基準法第91条|Wikibooks
なので、1時間遅刻しようが3時間遅刻しようが半日分を超えて減額するのは違法ですし、1ヶ月(20営業日だとする)に3日欠勤したからといって、10%を超えて減給するのも違法です。
また、減給によって最低賃金を下回る時給になった場合も違法です。最低賃金についての詳細は以下の記事に記載があるので、気になる方は読んでみて下さい。
最後に|まともな会社でないなら転職しよう
違法であるケースは論外ですが、先ほどの2つのケースのような違法まがいのことをやっている会社はまともではありません。
上記2つに当てはまるようなら、転職したほうが賢明でしょう。
とはいえ、いきなり今の会社を辞めるのも気が引ける方もいると思います。私も辞めるときはさすがにすこし躊躇しました。
なので、まずは転職エージェントに相談してみましょう。
水面下で転職活動し、転職先が決まってから退職届を出す。こうすることで、自分の収入が途切れることも防げますからね。
スムーズな転職を行うためにも転職エージェントは利用すべきです。転職エージェントは企業の紹介だけでなく、書類の添削や面接対策も行ってくれるからです。
また、注意しないといけないのが、転職エージェントの中にも、ブラック企業でもいいから、とにかく紹介数を伸ばして利益を伸ばそうとしている悪質なエージェント会社もあります。
それを避けるためにもおすすめの転職エージェントを選びましたので、最後に紹介します。
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